肥満退治は一石三鳥
東邦大医学部付属佐倉病院内科学講座・白井厚治教授
◇糖・脂肪、極力減らして
脳梗塞が非常に増えています。心臓発作や腎臓も含め、日本人の3人に1人が動脈硬化性の病気で亡くなっています。
ではなぜ動脈硬化が起きるのでしょう。危険因子が少しずつわかってきました。代表的なものは糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満ですが、問題は一つずつの症状が軽くても、二つ、三つ重なると急に状態が悪くなるということです。
これらが重なる大本には肥満があり、そこから糖尿病、高血圧、高脂血症(とくに中性脂肪)が同時に出てきて、動脈硬化を起こすことがわかってきました。これを「メタボリック(代謝)症候群」と呼ぶようになりました。
新たに起きている「沖縄問題」を紹介します。沖縄県は長寿で有名ですが、1995年から2000年の5年間に、それまで全国県別でトップ5に入っていた男性の平均寿命が急に26位に下がったのです。
年齢別では20~40代の死亡率が全国平均の1・6倍に達しています。心筋梗塞や脳血管障害など、動脈硬化性疾患はいずれも全国5番以内です。原因として最も考えられるのは肥満で、30代を除き、肥満の出現率が全国平均の約2倍になっています。
男性の肥満は沖縄県だけの問題ではありません。77~97年にかけて男性の体重は全国平均で3、4キロ上がっています。アジア人は少し太るとすぐこの病態になることがわかってきました。まさに疫病です。
BSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザが問題にされていますが、メタボリック症候群はすでに全国に広まり始めました。
でも、「肥満」を解消すれば、これら疾病は同時に減ってしまいます。まさに「一石三鳥」です。
1羽目は糖尿病です。糖尿病で入院し、減量すると、インスリン注射がいらなくなる人がけっこういます。2羽目は高脂血症です。コレステロールと中性脂肪がありますが、どちらも食事療法が有効です。3羽目は高血圧です。減量すると、これも改善します。
それでは、肥満退治のためにどんなことをしたらいいのでしょうか。総合戦略が必要です。まずは目標をきちんと決めること。2~4キロ減という小さな体重減少を設定し、目標達成を目指します。
それから体重記録をきちんと付けることです。体重変動をみると生活パターンがみえ、とても役立ちます。
次に日々の食事を見直すことです。糖分や脂肪は余分になると体内で中性脂肪となるので、太った人にはいりません。たんぱく質、ビタミン、ミネラルをきちんと取ってください。糖分と脂肪は極論すればとらなくてすみます。
食べ方については食べ物量を4分の1ずつ減らすことを勧めます。 次に運動です。1日1万歩の目標設定を勧めます。30分間運動すると、血糖値は30ぐらい下がります。
問題は、一度減量しても、元に戻ることです。グラフに体重変動を書き、周りの人にも見せ、家族が評価し、ほめあうことが大切です。少しでも減量でき、ほめられるとますますやる気がわいてきます。
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