21年間保存した精子で赤ちゃんが誕生!
精巣がんのため将来を考え17歳のときに精子を冷凍保存 この記事は「21年間冷凍保存されていた精子から試験管ベビーが生まれた。」と紹介している。
医師らによると、これほど長く冷凍保存した精子から実際に赤ちゃんが生まれたことはこれまでなかった。
この臨床チームを率いた、セントメアリー病院(英国・マンチェスター)の発生学者Greg Horneは「今回の一件は、将来、生殖不能なることに備えて精子を保存しておくことの意義を示している。できる限り多くの人が精子を保存すべきだ」と主張する。
今回の話の始まりは1979年にさかのぼる。当時17歳だった、この赤ちゃんの父親は、精巣がんだと診断された。生殖不能なることが分かっている治療を受ける前、父親は5パックの精子を預けた。精子は後に使用するために冷凍された。
この男性と妻は子供をもうけようと何年も努力した後、体外受精を行う治療を1998年から受け始めた。精子は1パックずつ解凍されて使用された。
Horneらの治療チームは、胚を作ることに成功したものの、女性の子宮に着床させることができなかった。医師は、保存精子を使ったときにできた胚の残りは、後に着床させるために冷凍保存した。
2002年、胚を着床させる試みがついに成功し、このカップルは晴れて男の赤ちゃんの親となった。このチームはこうした研究結果をHuman Reproduction(ヒト生殖学)誌に報告した1。
このカップルは、匿名のままでいることを希望しているが、彼らの話が若いがん患者に希望を与えるメッセージになるだろうと話す。がん治療の生存率は向上しており、その厳しい試練を乗り越えたとき、子供を作りたいことに気づく患者が増えている。
「精子や卵子を保存することは、がんと診断されたばかりの人にとって気持ちの強い支えとなりうる」とHorneは賛成する。「それは患者ができることの中で前向きなことだからだ。何かを将来のためにとっておいたことで、気持ちが楽になる患者が多い」と彼は話す。
顕微授精
Horneらの研究チームによると、冷凍保存の期間が長くなったために、成功の可能性が著しく落ちることはないようだ。このカップルが用いた卵細胞質内精子注入法(顕微授精)という体外受精技術では必要な精子は1個だけで、精子は卵子に直接注入される。
「現在の不妊治療全体の約半分が卵細胞質内精子注入法であり、大量の精子を必要としないので成功の可能性が高い。見た目の悪くない精子が1個でもあれば、子供ができるチャンスがある」とHorneは説明する。
このカップルは、英国の国民健康保険(NHS)のおかげで無料で治療を受けた。「今回のような成功例は、無料で利用可能な医療機関の重要性を訴えるものだ。国民健康保険がなかったら、彼らは親にはなれなかっただろう」とHorneは話した。
2004年6月3日の記事からです。とても感動的な記事でしたので紹介します。
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